微小欠失症候群

微小欠失症候群は、いずれかの染色体の一部が欠けていること(欠失)で引き起こされます。
重度の先天異常が見られ、精神的発達や身体的成長が著しく制限される傾向があります。
当センターでは下記5つの微小欠失についてお調べします。

◆1p36欠失症候群

1p36欠失症候群は、1番染色体短腕にあるとても小さな部位がないことによって引き起こされます。
症状:精神運動発達の遅れや筋緊張低下、てんかんなどの神経症状に加え、特徴的な顔立ちや、先天性心疾患などの合併症を示します。女児の方が2倍多いと考えられています。しかしまだ知られていないことも多く、通常の検査では見つけ出すことが難しいなどの理由により、正確な発症頻度はわかっていません。精神運動発達は遅れながらも伸びていきます。構音障害(正しく発音ができない状態のこと)を示しながらも会話が可能になる場合もあれば、自力歩行ができない場合もあり、経過はさまざまです。染色体欠失の大きさや、合併症の程度にも影響されます。

◆ウォルフヒルシュホーン症候群

ウォルフヒルシュホーン症候群は、4番染色体短腕にある部位がないことがないことによって引き起こされます。
症状:顔貌上の特徴、成長障害、精神運動発達遅滞、知的障害を呈します。1/50,000人程度と推定されていますが、欠失が小さい患者さんは見逃されている可能性があり、実際はもっと多い可能性があります。患者さんの健康状態は合併症の内容と治療状況によります。発達の遅れの程度も様々です。

◆ネコなき症候群

5p欠失症候群は、5番染色体短腕にある部位がないことによって引き起こされます。
症状:全体的な発達の遅れ、筋緊張の低下、成長障害、顔貌の特徴など共通する症状を持ちます。患者さんごとに症状や重症度に個人差があるため、様々な経過をたどります。この症候群の生命的な予後は現在の治療法の進歩により改善しています。生命にかかわる主要な合併症が無ければ、生命予後は一般的に良好と言われております。

◆アンジェルマン症候群

アンジェルマン症候群は、15番染色体短腕q11-q13に位置するUBE3A遺伝子の働きが失われることによって引き起こされます。
症状:重い知的障害、てんかん、ぎこちない動きを示し、ちょっとしたことでよく笑うなどの特徴を示します。
この症候群を持つ方は、平均して5歳くらいで一人歩きができるようになります。理解は進みますが、発語は難しいことがほとんどです。大人になるとあまり動かなくなることが知られ、そうなると肥満になりやすくなるので、適度な運動を続けることが必要になります。

◆プラダーウィリー症候群

プラダー・ウィリー症候群は、15番染色体長腕q11-q13に位置する父由来で発現する複数の遺伝子の働きが失われることによって引き起こされます。
症状:生後すぐから力が弱く、呼吸や哺乳が障害されます。中度の知的障害を合併し、小さな手足、特徴的な顔貌を示します。乳児期の発達は遅いですが次第に追いつき、歩行開始以後は運動発達の遅れはあまり目立ちません。3歳を過ぎたころから食欲が抑制できず自然に任せると高度肥満になります。学童期以降は福祉就労が目標になりますが、食事に関する問題と精神的な問題が主たる問題となるので、社会参加を目指して早期から環境整備や心理発達支援に取り組むことが望まれます。

◆ディ・ジョージ症候群

ディ・ジョージ症候群は、22番染色体長腕q11.2にあるとても小さな部位がないことによって引き起こされます。
症状:先天性心血管疾患、軽度から中等度の精神発達遅延、特徴的顔貌など多様な臨床症状がでる可能性があります。この症候群の生命予後に深くかかわるのが心血管疾患の重症度です。通常は、乳児期にチアノーゼ(低酸素血症のために口唇や爪床が紫色になる症状)を生じてチアノーゼ発作や運動制限などのために手術が行われます。心内修復手術を行えば術後の状態にもよりますが通常の日常生活は過ごせるようになりますが、激しい競技スポーツや運動は制限されます。